極上の他人
「会社でも、亜実さんは独身社員みんなに見合いをすすめたりコンパをセッティングしてるから、輝さんに迫ったのも簡単に目に浮かぶ」
どうしてそこまで縁結びに力を注ぐのかはよくわからないけれど、生きがいのように強引に事をすすめる亜実さんを何故か憎めない。
「私も何度もお見合い写真を持ってこられたし、コンパにだって誘われたもん。本当に強引」
屈託なく笑う亜実さんを思い出して、気持ちが軽くなる。
あれだけ溢れた涙も止まっている。
「ふーん。史郁も、見合い、喜んでたんだな」
「は?」
不機嫌な輝さんの声に、視線を向けると、声だけではなく、表情だって、不機嫌な気持ちを隠そうともしていないとわかる。
え?どうして?
戸惑う私に構う事なく輝さんの低い声は続く。
「で?これからも亜実さんに勧められれば見合いをするのか?」
「え?ひ、輝さん、どうしたの……」