極上の他人
考えてもらったのって、そんな、突然言われても。
「えっと、どんな仕様だったのかもはっきり覚えてないんですけど。それに、展示場の建設って、初めてで、よくわからない……」
「ぐずぐず言わない。誰でも初めての時はあるし、忘れたのなら思い出せばいいだけのこと。それに、研修中同じグループだったメンバーの中で本社配属の同期も一緒だから。
安心して『無謀な幸運』を味わってきなさい」
佐山先輩は、そう言って私の肩をぽんと叩いた。
「この会社で仕事を楽しむのなら、これくらいのチャレンジに尻込みしてちゃだめよ」
「でも……」
「あなた達だけじゃ進め方もわからないだろうし、何人かの営業担当と本社から設計担当がサポートでつくから大丈夫。
たくさん勉強して、この会社に入社できたことがどれほど幸運なことなのか、実感してきなさい」
「は……はい」
佐山先輩は、これから私の身にどんなことがふりかかってくるのかをちゃんとわかっているように、余裕に満ちた笑みを浮かべて頷いた。