極上の他人


輝さんよりも若い、私と同い年くらいの男の子だ。

彼は、私の手元にお水とお手拭を置きながら、くすくすと笑っている。

輝さんと同じ黒いカッターシャツにジーンズ。

バイトさんかな?

「店長が見合いするっていうから、どんな人かと思っていたんですけど、こんなに若い女の子だとは思わなかったですよ。
店長の相手だからもっと年上の、大人の女性かと思ってました」

「はあ。……ごもっともです。はい」

私だって、私と輝さんとでは、年齢的にも内面的にもバランスがいいとは思えない。

「でも、会社の先輩が無理矢理写真と釣書を置いていったから、仕方がなくて。
これまで何回もお見合いの話がきてその度逃げていたんですけど今回はあまりにも強引で断れなくて。まあ、大人のつきあいっていうか」

小さくため息をつきながら、肩をすくめた。

「まだ若いのに、そんなに結婚したいの?」

「え?いいえ。入社して間がないし、結婚なんて全然考えてないのに、何故か私のもとにはお見合いの話が次々と。亜実さん、一体何を考えてるんだろう」

ふと呟いた私の言葉に、目の前の男の子はにやりと反応した。

「ああ、亜実さんね。時々旦那さんとここに来てはいちゃいちゃやってるよ。
俺もコンパに駆り出されて、亜実さんの会社の女の子たちと飲んだことあるし」

「え?うちの会社の子と?」

「そう」

美月千早くんという彼は、私の同期の女の子の名前を数人挙げて、今でも連絡を取り合っていると教えてくれた。

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