極上の他人
そう続けようとした言葉も、頬をつたう涙に気付いた途端途切れてしまった。
自分以外に頼る術を持たない私に、そして、きっとそんな私のことをよくわかっているだろう輝さんに言われた言葉は、私の全てを揺るがしたと言っても間違いじゃない。
それを狙っていたかのような、大人ゆえの余裕の輝さんって、やっぱり。
「ずるいです……。私、そんなことばかり言われて優しくされたら、どっぷり、甘えてしまいそうです」
誠吾兄ちゃんに私の面倒を頼まれたからだけだというのに、結局は私の恋する気持ちを逆手にとるような言動と態度で私を囲い込む。
まるで私を逃がさないように。
「誠吾兄ちゃんがどう言ったのかは知りませんけど、私は……今までも一人でちゃんと生きてきたから大丈夫です。
時々輝さんのお店でおいしい食事をいただけたらそれで、十分……」
『十分なんかじゃないだろ?今だって、俺の言葉に泣いてるだろ?それって、俺に甘やかされることが嬉しくて仕方がないってことで、それを史郁も望んでるってこと。
自分は一人だからって強くなり過ぎなくていいんだぞ。俺は、史郁のことを守りたいし、大切にしたいだけだ』
「大切にしたい……」
輝さんの言葉に、私は小さく息を吐いた。