極上の他人
私が輝さんの車に乗り込むところを見られることもあるようで、これまで挨拶程度の関わりしかなかった社内の人たちからも『今日もお迎えが来てるの?』とからかわれることも少なからずある。
そして、照れる私が新鮮に見えるのか、親しい距離で話せる人も増えてきた。
これも全て輝さんのおかげだ。
輝さんが私の夕食の面倒をみてくれるようになって、心身ともに私は健やかな日々を送っている。
こんな関係を、敢えて亜実さんに報告してお礼を言ってもいいものかと悩み、輝さんが私をここまで親切に面倒をみてくれる真意もわからないままだけれど、仕事の忙しさにかまけて、深く考えないようにしている。
考えれば考えるほど、輝さんのことを好きだと実感して、苦しくなる。
けれど、輝さんが私を恋人と意識しているとは思えない。
あの日のキスだって……現実のものだったのかと首をかしげてしまうほどあやふやな思い出になりつつあって、そして輝さんもそれ以上を私に求めようとはしないから。
……やっぱり、私は輝さんにとっては『誠吾先輩のかわいい姪っ子』っていうことなんだろう。
それが現実だ。