極上の他人


急いで会社のロビーを抜けて外に出て、大通りを渡ってすぐのカフェ。

そこに、私を待っている輝さんがいた。

深く腰掛けた椅子に身体を預けてスマホを操作している整った姿は、周囲からの注目を集めていて、いつ見てもどきどきしてしまう。

そして、女性たちが時折ちらりと向ける視線に気付かないのか気付いていないふりをしているのか、全て無視している様子にどこかほっとする。

「お待たせしました。いつもごめんなさい」

「お疲れ様。慌てて来なくてもいいっていつも言ってるのに、今日も息が上がってるぞ」

「あ、……ごめんなさい、つい急いでしまって」

輝さんのメールが届くと、いつも仕事の段取りをつけようと慌ててしまうし、いざ仕事が片付いても早く輝さんに会いたくてついつい急いでしまう。

そんな私を輝さんは「焦って仕事でミスしてもだめだし、慌てて転んでも困る。俺は逃げないからゆっくりとおいで」とやんわり諭してくれる。

輝さんの言葉を守ろうと思っても、少しでも早く輝さんの顔が見たいという気持ちは抑えられなくて、今日もカフェまで小走りだ。

そのせいか、軽く息も上がっていて、輝さんはそんな私を見て苦笑している。

「史郁は自分のペースを崩さずに、仕事を一生懸命頑張ればいいんだよ。俺は史郁が笑って暮らせるようにちゃんと守ってやるから、何も心配しなくていい」

「守って……?」


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