極上の他人
「あ、ああ。守ってやる。史郁が穏やかに、好きな仕事に打ち込める毎日を送ることができるように、守ってやるから、安心しろ」
「安心って……。私、今は何も不安はないっていうか……えっと、仕事は大変だけど、輝さんの手料理のおかげで体調もいいし、大丈夫、ですけど?」
「大丈夫か……それなら、いいんだ。史郁に何もなければ、俺はそれで……。じゃ、行くか。今日も忙しかったんだろ?史郁の好きなマカロニとツナのサラダも用意してるから、楽しみにしてろ」
「ツナサラダ、やったっ。輝さんのお料理はなんでもおいしいけど、サラダは特においしいです。ドレッシングが違うのかな」
ただでさえ空腹の私には、大好物のツナサラダを想像するだけでお腹が鳴りそうだ。
昼食を食べてからかなりの時間が経っているんだから、当然かな。
私の明るい声に輝さんは目を細めると、どこかほっとしたように小さく息を吐いた。
そして、テーブルに置かれていた伝票を手にして立ち上がった。
「今日も仕事を頑張った大切なお嬢さんに、おいしい食事を食べてもらいましょうか」
にっこりと笑って、私の頭をくしゃり。
そのまま当然のように私の手を取って、レジへと向かうのもここ数日繰り返される自然な流れ。
私もいつの間にか逆らわずに手をつないでいる。
私の数歩先を歩く輝さんの背中を眺めながら、嬉しさで震える身体をどうにか動かしてついて歩く。