極上の他人
そして、来場されるお客様に満足してもらえるような、そんな展示棟を作り上げたいと思う。
「今、住宅展示場ってデートスポットとして話題になってるの。恋人たちが未来を語り合うには絶好の場所だし、建てられた家はインテリアも計算されているから勉強にもなるし。そんな展示場の建設に携われるなんて幸せなことだもん、残業なんてへっちゃらへっちゃら」
私の明るい声に、千早くんもつられて笑った。
「そっか、住宅展示場ってデートスポットなんだな。今度使ってみようかな……」
「え?千早くん、彼女いたっけ」
「ん?まあ、いる……よ」
言いづらそうに言葉を濁した千早くんは、乾いた笑顔を作り「ま、俺のことはいいから」と呟いた。
「……もしかして、片思い?」
「んー。両想い?」
「……何それ」
「いろいろあるんだよ。うまく気持ちが伝わってないっていうか……。俺、女には困らない生活を送ってたからな。信用ないし」
溜息を吐きながらの言葉から、千早くんがかなり落ち込んでいるとわかる。