極上の他人
この人が輝さんの大切な人なんだと、落ち込み、彼女になりたいと苦しむ自分を簡単に想像できる。
そんな私を気遣って、輝さんは彼女が私のいるカウンター席に顔を向けないよう、それを遮るように急いで外へと出たのかもしれない。
「食べたら、すぐに帰る」
精一杯の笑顔を作って、千早くんにそう告げると、私は目の前の茶わん蒸しの残りを一気に食べた。
「ふみちゃん……。俺からは何も言えないけど、早合点はだめだからな……」
更に何か言いたげな千早くんは、ちょうどお客さんから声をかけられ、私を気にしながらもお店の奥へと行った。
一人になった私は何故かほっとし、顔に貼りつけていた笑顔を解除して、そっと目を閉じた。
そしてその後は何も考えないように意識して、小さな頃から何度も味わっている孤独と折り合いをつけながら、ひたすら食事を続けた。
しばらくしてお店に戻ってきた輝さんにも普段通りの笑顔を向けて、
「ごちそう様、おいしかったです。いつもありがとうございます」
と言える余裕すら生まれてきた。
そう、私はもともとひとりなんだから、大丈夫。