極上の他人
③
翌朝、涙のせいで腫れている目を冷やし、どうにかメイクでごまかした。
会社で亜実さんに会った時、「あれ?メイク変えた?」と聞かれたけれど、普段からそれほど手をかけたメイクをしていない私にとっては「変えた」というよりも「頑張った」と言う方が近いかもしれない。
アイラインなんて使わないし、つけまつげもどうやって付けるのかすら知らない。
今日は、腫れている目を隠そうとアイシャドウを濃いめに入れてみたけど、それすら慣れていなくてかなり時間がかかった。
こんな私って、女の子としてどうなんだと、情けなくなる。
年上の輝さんが私を女性として見てくれないわけだよね、と前夜に引き続き落ち込んだりもした。
けれど、涙を流すとアイシャドウが落ちてしまうと自分に言い聞かせて、泣くことだけは我慢。
これがなかなか効果を上げた。
これからも、泣きたくない時にはきっちりとメイクをしようかなと、仕事とは関係のないことを考えながら気持ちを落ち着かせていた。