極上の他人



翌朝、涙のせいで腫れている目を冷やし、どうにかメイクでごまかした。

会社で亜実さんに会った時、「あれ?メイク変えた?」と聞かれたけれど、普段からそれほど手をかけたメイクをしていない私にとっては「変えた」というよりも「頑張った」と言う方が近いかもしれない。

アイラインなんて使わないし、つけまつげもどうやって付けるのかすら知らない。

今日は、腫れている目を隠そうとアイシャドウを濃いめに入れてみたけど、それすら慣れていなくてかなり時間がかかった。

こんな私って、女の子としてどうなんだと、情けなくなる。

年上の輝さんが私を女性として見てくれないわけだよね、と前夜に引き続き落ち込んだりもした。

けれど、涙を流すとアイシャドウが落ちてしまうと自分に言い聞かせて、泣くことだけは我慢。

これがなかなか効果を上げた。

これからも、泣きたくない時にはきっちりとメイクをしようかなと、仕事とは関係のないことを考えながら気持ちを落ち着かせていた。





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