極上の他人
そして、どうにか輝さんのことを考えないように気持ちをとがらせて一日を過ごすと、終業時間にはどっと疲れが身体を襲い、残業に耐えられるのかと不安になった。
けれどそんな不安は、仕事に一区切りをつけたと同時に一蹴された。
「今日は残業はなし。というよりも、今日までに固めた仕様内容を営業に回して確認してもらうんだ。回答は来週の半ばだから、それまでは通常の業務に戻って、後回しにしている仕事を片づけてくれ」
私達新入社員のサポートとして今回の仕事に就いている先輩の言葉は神様からの言葉のようで、その場にいたメンバーで顔を見合わせ安堵の息を吐いた。
今回の突発的な業務を抱えつつ、普段の仕事もこなさなければいけない日々は私たちの疲れをかなりのものにしていた。
それを乗り越えての成長だとわかってはいても、心身ともに疲弊していくのは避けられない。
私にとっては輝さんのことを考えなくて済む利点があるとはいえ、やはり疲れは隠せない。
「通常業務は明日にして、さっさと帰って寝よう」
会議室で資料を片づけながらぽつりと呟く私に、周囲の同期達は無言で頷いた。
「え?寝るより飲もうよ」
帰って寝るなんもったいないと、拗ねたような声をあげたのは野村艶ちゃんだ。