極上の他人
技術開発部で、主に外壁の設計を担当している。
「えんちゃん」というその名の通り、艶のある女性に育って欲しいという両親の願いを軽々と叶えている見た目。
入社当時、綺麗な顔だけではなく、長身と丸みを帯びた女性的なシルエットが話題となり男性からのアプローチも多くあった。
けれど、とことんお酒に強い彼女は「私を酔い潰したら付き合う」と言っては逆に男性を酔い潰し、その酒豪ぶりを発揮した。
恋愛に重きを置いていないという彼女は今も誰のものでもなく、それでも毎日を楽しく過ごしている。
「ふみちゃん、いつもお迎えに来てくれる男前の店に行こうよ。あの人『マカロン』の店長でしょ?お酒の種類は豊富だし、男前の店員も多いから目の保養にはもってこい。今日はお迎えは来ないの?」
「あ……残念ながら、来ないっていうか、えっと、知ってたの?」
「うん。何度か見かけたんだよね。店長がふみちゃんを恭しく大切な宝物みたいに助手席に押し込むところ」
「押し込むって……そんなことないけど」
「ふみちゃんを見つけて大きく笑ったかと思ったら、周囲から隠して自分の懐に取り込むように車に押し込むんだもん。遠目からでも笑っちゃった。確かにふみちゃんみたいに可愛い女の子は誰にも見せたくないだろうけどさ」
くすくす笑う艶ちゃんの言葉に驚き、資料を持つ手が止まった。