極上の他人
私の気持ちを全て見通すような瞳。
一人で暮らす日々、毎日を過ごすだけで精一杯の私の心は必要最低限の揺れしか見せないけれど、何故か今は輝さんの瞳に囚われて気持ちは大きく揺れる。
それに、男性とのこんな近い距離なんて本当に久しぶりで、焦っていると。
「マスカラ、してないんだ?それなのに、ふみちゃんのまつげ、こんなに長いんだね」
輝さんはくすりと笑うと、私の目元にふっと吐息を落とした。
「な、な、何を……」
慌てて体を離して、吐息が落とされた目元を手で押さえた。
熱くて優しくて、そして決して嫌だとは思えなかった輝さんの吐息の余韻がまだ私の体に残っていて、一体何が起こったんだ、と鼓動は跳ね続ける。
「亜実さんが強引に進めた見合いだけど、当たりだったな」
「あ、当たり……」
「ああ、かわいい女の子を紹介してもらって、若返った気分だ」
にやり。
意地悪な笑みを私に向けながら、輝さんはくしゃりと私の頭を撫でた。
それはまるで子供に対して見せる仕草そのもの。
何だか私の事をおもちゃか何かに見立てている気がしていい気分じゃない。