極上の他人
艶ちゃんご希望の「マカロン」は毎日混んでいると有名で、待ち時間も半端なく長い。
そのことは、夕食を食べに何度も通った私にはよくわかる。
お店の前に並んでいるお客さんたちを見る度、申し訳なくも思っていた。
今夜だって例にもれず混んでいるはずだ。
そんなわかりきっている状況を考えて、疲れている身体には早急に栄養補給をしなければ、と言う先輩の意見に皆が同意。
「マカロンは次回ということで」
艶ちゃんひとりが残念がる中、会社から近い居酒屋に行くことになった。
着替える必要がない男性陣は一足先に店に向かい、私と艶ちゃんは遅れて会社を出た。
普段よりもかなり早い退社時間だとはいっても既に二十時を回っていて、お腹もすいている。
あのお店は白和えがおいしかったな、と思いながら、ついつい早足で会社を出た。
隣を歩く艶ちゃんは、スリムジーンズにエメラルドグリーンのブラウス。
スタイルがいいと、華やかな色がよく似合うなと思いながら、ハイヒールを履いて170センチは優に超えている横顔を見上げた。