極上の他人


スタイルの良さはわかっていたけど、やっぱり素敵だなと改めて思う。

すると、艶ちゃんは私の思いを見透かすように呟いた。

「また、私のことを背が高くて羨ましいとか思ってる?」

「あ、うん」

どうして艶ちゃんに私の気持ちがわかったんだろうと苦笑しながら、再び艶ちゃんの姿に視線を向けた。

背筋が伸びた綺麗な立ち姿は、潔い艶ちゃんの性格をそのまま表しているようだ。

見た目だけでなく、芯の強い艶ちゃんの内面も羨ましくて仕方がない。

艶ちゃんを見ながら、昨日背が高い女性が、輝さんの隣に寄り添っていたことも思い出す。

顔こそ見えなかったけれど、輝さんに何かを訴える様子からは彼女の思いの強さが感じられた。

それに輝さんは、単なるお店のお客さんと一緒にお店の外で時間を作るなんてこと、しないと言っていた。

そのことだけでも十分彼女が輝さんの特別だと考えられる。

今日一日、忙しい仕事のことだけに意識を集中して、夕べのことは考えないようにしていたけれど、仕事が終わって気が緩んだのか目の奥が熱くなる。

夕べあれだけ泣いても尚、涙って枯れないんだな。

『今までおいしい夕食をありがとうございました。
今日からは自分でちゃんと自炊して食べるので、お迎えも夕食の用意も遠慮しますね。
忙しいお仕事の合間に時間を作ってもらって感謝しています』

今朝、そんなメールを輝さんに送って、そしてスマホの電源は切ったままだ。

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