極上の他人
確かに私の髪はまっすぐすぎるほどまっすぐで、神経質に手入れしなくてもそれなりにまとまる扱いやすい髪質。
小さな頃からずっとボブに近い髪形でいるのは、時間をかけなくてもブラッシングだけで出かけられる気安さからだけど、それを自慢できるものだとは思っていなかった。
単純に楽だな、とは思っていたけれど。
高校生のころは、ドライヤーで内巻きにしてみたり、アイロンでウェーブをつけてみたりしたけれど、半日ももたず気づけばまっすぐに戻っていた。
そのせいで、髪形にこだわることはなくなった。
「まっすぐすぎて変化もないし、艶ちゃんみたいにゆるふわでもないし。
女の子らしくないから、面白くないんだよね」
ぽつりと呟いた私に、「贅沢もの」と肩を竦めた艶ちゃんは、
「そうやって、誰でも自分にないものを求めて悩んでるの。
私は柔らかすぎるくせっ毛だから静電気は起こりやすいし痛みやすいし、直毛黒髪にはかなり憧れるけどね」
「そうなんだ」
「そう。それに、私みたいに長身じゃないふみちゃんのことを大切に思ってくれる人、いるじゃない」
意味ありげに首を傾げる艶ちゃんは、私の背後をじっと見ている。