極上の他人
輝さんの全てが私に向けられているような錯覚を覚えて、必死でそれを否定する。
輝さんが優しいことは十分知ってるけれど、それ以上の感情を私に対して……そんなこと、ないない。
すると、輝さんは私の頬を、そっと手の甲で撫でた。
私を見下ろす柔らかな表情の意味が読めない。
「史郁?どうした?」
「私……私はもう、いい大人だから、大丈夫です。誠吾兄ちゃんから私のことを頼まれているのかもしれないですけど、私自身がしっかりしていれば、輝さんの手を煩わせることもないので、安心してください」
自分の中の戸惑いをふっきるように、強い口調でそう言った。
輝さんに頼り続けるわけにはいかないし、これ以上好きになるのも怖い。
このまま距離をおいて、少しずつでも輝さんへの思いを小さくしていきたい。
けれど、そんな私に構う様子を見せない輝さんの言葉は、私以上に強気だった。
「確かに、誠吾先輩は俺に史郁のことを頼んで渡米したな。……そんなこと、どうでもいいけど。第一、俺は自分の意志で史郁を気にかけているし最優先に考えてる。だから、史郁がどう思っていても、俺は史郁を守ることをやめない」
言葉だけではなく、その瞳にも強い意志を含めて、輝さんはぶれることなく私を見つめる。