極上の他人
興味ありげに私達に向けられる視線。
中にはくすくす笑いながら通り過ぎる人たちもいる。
私は慌てて輝さんの胸から離れようとしたけれど、輝さんは離そうとしない。
私が逃げるとでも思っているのだろうか。
「輝さん、離してください。みんな、見てます」
「離すと逃げるだろ?」
「に、逃げるってそんな……私はこれからみんなと飲むだけで」
「みんなって?」
「同期のみんなです。男性陣はとっくにお店に行って待ってるんで離してください」
「男性陣?」
輝さんの低い声にビクッと身体を震わせた。
そして、眉を寄せる不機嫌な表情を向けられて、身体は強張る。
すると、どこか硬い空気をまとった私と輝さんの様子を見ていた艶ちゃんが、再び呆れた声をあげた。