極上の他人


「だからさあ、二人でどこかに行って喧嘩してよ。というより、ふみちゃんのことが大切ならもっとちゃんと捕まえておいたほうがいいですよ。どう考えても鈍感な子だから」

呆れながらも明るい艶ちゃんの声が、その場の空気を和らげてくれた。

その言葉の向かう先は輝さんに違いなくて、腰に手を当てながらため息をつく艶ちゃんの堂々とした立ち姿は見惚れるほど。

長身プラスハイヒール。

普段からそうだけど、やっぱり格好いい。

長身だという自分を気にしてそれを隠そうとする女性もいるけれど、艶ちゃんはそれをしっかり武器にしている。

自分がどうすれば綺麗に見えるのかをちゃんとわかっているようで、羨ましい。

長身だからだとういうよりも、自分に自信を持っている艶ちゃんは、輝いて見える。

「で?ふみちゃんはどうする?このままこの強引なお兄さんに連れられて帰る?それとも一緒に飲みに行く?」

ほんの少し首を傾げた艶ちゃんはにやりと笑った。

どっちでもいいよーとでもいうような軽い口調に、私は「え?どっちでもいいの?」と驚き焦った

「そ、そりゃ、飲みに行く約束をしてるんだから、このまま艶ちゃんと一緒に行く……」

「だめだ。このまま店に連れて行くから」

「え?どうして?」

「史郁には、俺の店で夕飯を食べないっていう選択肢はないからだ。断りのメールも拒否。
このまま俺の店で夕飯を食べるか、家に帰るかどっちかだ」

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