極上の他人


そして、輝さんの瞳にぐんぐん取り込まれていく。

「苦手だと思ったままじゃ、人生を損して終わるかもしれないぞ。
普段とは違う選択が、楽しい毎日を送るきっかけになることもある」

輝さんは軽く笑いながら、『ほら、食ってみろ』と顎を揺らした。

「単なるカレーなのに、人生だとか大げさです……」

「お?国民食であるカレーをバカにするなよ?カレーが苦手だと生きにくい世の中だろ?」

「……確かに。カレー好きな人は多いから、やっぱり目にする機会は多いし」

「だろ?今後の人生のために、意識改革だ。食べてみろ」

「……意識改革って」

本当、どこまでも大げさな人。

カレーをバカにする気はないけれど、辛いものは苦手だから、やっぱりスプーンに手を伸ばすだけでもそれなりの勇気が必要だ。

けれど、期待に満ちた目で私を見ている輝さんの笑顔に導かれるように、気合を入れる。

「いただきます……」

こわごわと口にした輝さんお勧めのカレーはやっぱり辛くて、顔をしかめながら食べた。

野菜がたっぷりと入っていて、どちらかというと家庭で作る味に近いけれど、私には辛くてハードルの高い味だった。

辛さには耐えられず、何度もお水を飲みつつ完食したけど、デザートのヨーグルトシャーベットの冷たさで体を鎮めるまで何も話せないくらいだった。


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