極上の他人


『そ、そりゃ、日本に一人で残る史郁のことを頼んだけどな、だからといってしょっちゅう会えだとか、呼び捨てにしてもいいだとか、そんなことは言ってない。
史郁に何かあった時には俺から連絡するからその時には頼むって言っただけだ。
それに今聞いたけど、輝の店で毎晩夕食を食べてるんだろ?そんなに親しくなれとは頼んでない』

声高に話す誠吾兄ちゃんの声にかぶさるように、「そんなに興奮しないでよ、ばかおじ」と声が聞こえた。

弓香さんだ。

懐かしい声にほっとしながら、気持ちを傾けて聞いていると。

『この馬鹿に、いい加減ふみちゃん離れしろって言っておくからね』

相変わらず頼りがいのある明るい声が続いた。

誠吾兄ちゃんを睨みつけている弓香さんの顔が簡単に想像できる。

『こっちは元気だから安心してね。ふみちゃんも輝くんと仲良くね〜。ほら、ふみちゃんも忙しいんだから、切るわよ。輝くんの邪魔するなんて、私が許しません』

誠吾兄ちゃんを一喝する声と共に、電波は途絶えた。

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