極上の他人
自分の腰に私の手を押さえつけるような仕草はかなりの密着度を生み、私の身体は一気に熱くなった。
「ひ、ひかるさん……っ」
焦る私とは対照的に、輝さんは落ち着いた声で囁く。
「誠吾先輩とも相談して、明日からは、朝も会社まで送っていくことになったから」
「……朝も?ですか?私をわざわざ会社まで送ってくれるんですか?え?どうして?輝さん、誠吾兄ちゃんとどんな話をしたんですか?」
「うーん、なんだったかなあ」なんて言いながら、そのまま歩き続ける輝さん。
私は輝さんと出会ってからずっと、つかみどころがない彼に振り回されている。
密着したままの私たちの会話はじゃれあっているようにも感じるけれど、私一人が右往左往しているようだ。
空回りばかり。
「誠吾先輩と話したことは、もちろん、史郁を大切にしてるってことかな。大好きってこと」
「そ、そんなこと……」
「そんなことも何も。俺、何とも思ってない女にここまで時間割かないし。誠吾先輩に頼まれた以上のことをこれだけしてるだけで思いは伝わっているかと思ってんたんだけど。まだまだだったか」
輝さんの胸が、小さな笑い声で震える。