極上の他人
「うん。昨日、ふみちゃんが私の名刺を輝さんに渡してくれたんでしょ?今朝、早速メールがきたよ。史郁のことよろしくーって。愛されてるね」
ぐふぐふとでも聞こえてきそうな笑い声をあげて、えんちゃんは水川さんと歩き出した。
そのあとを慌てて追いかけながら、もう一度ふり返る。
眩しいほどに輝く水面に再度見惚れて、いつか私も……と、叶うわけもない願いを押し殺して二人の後に続いた。
それにしても、今朝車を降りる時に思い出して名刺を渡したばかりなのに。
既に輝さんは艶ちゃんにメールを送っているなんて、早すぎる。
私以外に輝さんとメールのやり取りをする人がいるのは当然だと、わかってはいても。
やっぱりいい気分じゃない。
水川さんをからかい、楽しげに歩く艶ちゃんの後ろ姿を見ながら、私は小さく息を吐いた。