極上の他人


そして、食後のコーヒーと、これもまた輝さんの手作りだというシフォンケーキをおいしくいただいたあと、私は席を立った。

お財布を手にレジへと向かうと、輝さんが心外だというような顔を見せた。

「大切な女の子からは、お代はいただかないから」

「でも、そんなわけにはいかないので。それに、私は大切な女の子じゃないですし……」

「絶対にいらないから」

「でも、申し訳ないです……」

どう言ってもお金を受け取ってくれない輝さんは、からかうように私の顔を覗き込む。

「申し訳ないって思うなら、忙しい俺に、これからもその可愛らしい顔を見せて和ませてよ。それで十分だから」

「かわいらしい……って、えっと、そんな……」

「くくっ。今のその照れた顔は今日のカレーのお代以上の価値だな。
これからも忙しい俺を癒やすために、夕食を食べにおいで。待ってるから」

輝さんは照れることなくそう言うと、お金を受け取ってくれないばかりか、お店の料理をいくつか詰めて持たせてくれた。


< 20 / 460 >

この作品をシェア

pagetop