極上の他人
そして、食後のコーヒーと、これもまた輝さんの手作りだというシフォンケーキをおいしくいただいたあと、私は席を立った。
お財布を手にレジへと向かうと、輝さんが心外だというような顔を見せた。
「大切な女の子からは、お代はいただかないから」
「でも、そんなわけにはいかないので。それに、私は大切な女の子じゃないですし……」
「絶対にいらないから」
「でも、申し訳ないです……」
どう言ってもお金を受け取ってくれない輝さんは、からかうように私の顔を覗き込む。
「申し訳ないって思うなら、忙しい俺に、これからもその可愛らしい顔を見せて和ませてよ。それで十分だから」
「かわいらしい……って、えっと、そんな……」
「くくっ。今のその照れた顔は今日のカレーのお代以上の価値だな。
これからも忙しい俺を癒やすために、夕食を食べにおいで。待ってるから」
輝さんは照れることなくそう言うと、お金を受け取ってくれないばかりか、お店の料理をいくつか詰めて持たせてくれた。