極上の他人
どこか慌てている様子に違和感を感じながら、私は小さく頷いた。
「今日は定休日なんだけど、営業日なら誰でも入ることできるわよ。あ、週末にはイベントをやるから、よかったら遊びにきてね」
「あ、はい……」
「……ん?」
目の前の女の子は、何かを探るように私をじっと見ている。
荒い息遣いと肩を上下させている様子を見れば、ここまで走ってきたんだろうとわかるけれど、どうしてそんなに慌てているんだろう?
私から目を離さない彼女を見つめ返したまま不安になっていると、その額に浮かぶ汗に気付いた。
眉の辺りで揃えられた前髪も、汗で額にくっついている。
私は、スカートからハンカチを取り出して彼女に差し出した。
「そんなに汗をかくほどどうしたの?急いでるの?」
「え、いいえ、そういうわけじゃ……」
俯いたまま目の前のハンカチを見たまま受けとろうとしない彼女に、艶ちゃんが明るく声をかけた。