極上の他人


「お化粧してないんだね。ファンデーションがつくことを気にせず汗がふけるって羨ましいなあ。私なんて、まずティッシュで汗ふくもん」

「あ、私も。タオル地のハンカチならそのまま拭いちゃうかなあ」

「ふみちゃんはほとんどメイクしてないようなもんだからいいんだよ。肌がきれいって財産だよね」

ははっと笑い飛ばす艶ちゃんこそ、大して顔に塗ってるわけではないのに人目を引く顔立ち。

それこそ財産なのに。

「ほら、さっさと汗を拭かなきゃ。かわいい顔が台無し。でも、若い女の子の汗ってきれいだね」

「ちょ、艶ちゃん」

ハンカチを受け取ろうとしない彼女に痺れを切らしたのか、艶ちゃんは私の手からハンカチをさっと取り、いきなり彼女の額の汗を拭き始めた。

決して強く拭いてるわけではないけれど、さすがに彼女も驚いている。

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