極上の他人


たとえ朝晩の送り迎えと、夕食の時間だけしか一緒にいられなくても、そして、輝さんに恋人がいたとしても。

輝さんが自分の意志で私の側にいて気遣ってくれるのならば、私は輝さんと一緒にいたいと思う。

「輝さん、明日はいつもの茶わん蒸しが食べたいです。銀杏入りの」

「……ああ。わかった。ちゃんと用意しておくから、明日も仕事頑張れよ」

「はい。楽しみにしてますね」

嬉しそうに頷いている輝さんの様子をみていると、私も同じように嬉しくなって、手元の梅酒の残りを一気に飲み干した。

グラスに残った梅を見ながら、この梅も、輝さんの手によって大切に漬けられたんだなと思い、意味なく妬いてしまった。

輝さんが大切にしているもの全てが嫉妬の対象となり羨ましさを隠せない。

それがたとえ梅だとしても……、っておかしいかな。

けれど、もうしばらく、私の側にいて欲しい。

私だけを、見ていて欲しい。

そんな思いを素直に受け止めると、予想以上に心は軽くなって弾む。

「輝さん、この梅酒、もう一杯下さい」

自分でもわかるほどの明るい声で、梅酒のおかわりをした。

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