極上の他人



家に帰って、亜実さんから手渡されて以来読むことのなかった釣書を眺めてみると、輝さんの略歴が一通り書かれていた。

「へえ、頭いいんだ」

誰もが知っている有名大学を卒業し、二年前まで塾の講師をしていたけれど、今ではバーの店長さん。

その流れにほんの少しの違和感を覚えながらも、お店で生き生きと働いている輝さんには今の仕事が合っているように思えて納得もした。

あの整い過ぎた見た目と人当たりの良さ。

出会って間がない私の食生活まで心配してくれるほど優しいし、きっと客商売が向いているんだな。

亜実さんが言っていたように、女性にもてすぎて大変そうだけど。

それに、輝さんの恋人になった女性は、浮気や誘惑をいつも心配して神経がすり減りそうだ。

恋愛経験が少ないうえに、人の優しさに甘えることが苦手な私には手が届かない別世界の人とも思える。

そして、その事実がとても切なくて、知らず知らず何度もため息を吐いていた。

ため息を吐きながらも、頭に浮かぶのは、どこかつかみどころのない、大人の男性の顔。

輝さんだった。



   


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