極上の他人


「あとは、交通費の請求をしなきゃ」

報告書をまとめてほっと一息ついた時、私の手元に、そっとコーヒーが置かれた。

はっと視線を上げると、心配そうな顔をしている亜実さんがいた。

「煮詰まった顔をしてるけど?例の展示場、うまくいってないの?」

「あ、いえ、それは順調です。営業部とのすり合わせも無事に終了しました」

「今年の新入社員は精鋭ばかりだって営業部の課長も言ってたから、問題ないとは思ってたけど。それは良かった」

「はい……きっと、来週中には全てアップします。あとの作業は現場に……」

「そうか、お疲れ様。じゃ、ふみちゃんの目が生きてないのはどうしてなのかな?」

「え?生きてない……?」

「そ。なーんにも熱が感じられない醒めてる目」

私の顔を覗き込んで、うーん、と呟く亜実さんは、そっと指先を私の瞼に当てると。

「この辺りに、溜まってる感じがする。なんだかいっぱい」

目元をそっと撫でて、そのまま眉間のしわを伸ばすように何度も上下させる。

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