極上の他人
輝さんに会いたくて通っているのかもしれないと感じて戸惑うけれど、戸惑いながらも心は素直に輝さんに会いたいと告げる。
客商売なんだから、輝さんが笑顔を上手に作るなんて当然のこと。
それは私だけに向けられるものではないとわかっていても、私と視線が合う瞬間に顔を崩して優しさを向けてくれる輝さんに、ときめく自分を否定できない。
たとえ私のことを単なる客の一人だとしか見ていなくても、その優しい笑顔だけで、私は自分が輝さんに受け入れられているようで嬉しくなる。
小さな頃から自分の居場所はどこなんだろうかと不安定な感情を抱えていた私には、無条件で受け入れてもらえる場所だというだけで、自然とお店に足が向く。
輝さんのお店にいるだけで、心は落ち着き、ほっとする。
今日も輝さんのお店にでおいしい夕飯を食べたい、と思いながら仕事をすすめていると、ふと机の横に人が立つ気配に気付いた。
「あ、亜実さん」
見上げると、亜実さんがにっこりと笑っていた。
細身の体にハイヒールを履き、自信に満ちた笑顔を浮かべる姿は男女問わず惹きつけられる。
大きな瞳からは優しい光もあふれていてホッとする。
これで仕事もできるんだから、無敵だ。