極上の他人
私を諭す亜実さんを見上げると、見慣れた優しい笑顔が私を見つめている。
亜実さんは自分が幸せな結婚をしているせいか、その『お幸せ』を周囲にも分けることを生きがいのようにしている。
「輝くんは電話でふみちゃんのことをかわいい女の子だな、って言っただけでこの先どうするかは教えてくれなかったのよね。てっきりあのお見合いは進められないのかと思ってたんだけど」
亜実さは、ん?と首を傾げながら私に問う。
「え……っと」
私にも、どう答えていいのかわからない。
「ふみちゃんも輝くんを気に入ったとか何も反応がなかったし、二人の縁はなかったんだって思って残念だったんだけど、違うの?」
「い、いえ、私達、別に何もないんですけど、その。えっと……」
何度も輝さんのお店に夕食を食べに行ってるって言っていいんだろうか。
輝さんが亜実さんに何も言ってないのなら、私もそのことは言わないほうがいいのかもしれない。
それに、輝さんにとって、やっぱりあのお見合いは嫌々受けただけで、私のような年下の女は、お見合い相手として真面目に考えてもらえないんだろうか。
……確かに、何度お店に行っても、単なる店長とお客という関係以上のものは何も感じられないし、輝さんが私に向ける笑顔は相変わらず『年下の女の子』を大切にするだけのものにしか見えない。