極上の他人


「輝くん……に電話して欲しいって言われたのよね。だからそろそろかけようかなって言おうとしただけなんだけど?
輝くんの名前にそんなに反応しちゃうなんて、わかりやすくて、かわいい」

「え?電話……?」

「そ。夕食は毎日輝くんのお店で食べてるんでしょ?それにお迎えだって毎日。さっき会社を出る前に私が輝くんに電話したでしょ?その時に、輝くんから、迎えに行くから適当に電話くれってお願いされてね。……そっか。そっか。ふみちゃんは輝くんが……」

「えっと、私は」

「いいのいいの。ふみちゃんと輝くんと引き合わせたのは私だし、二人に縁があったのなら嬉しいもん。お見合いのあと、輝くんは私に何も言ってなかったけど、自分でふみちゃんとの距離を縮めていたのね」

嬉しそうに笑うと、亜実さんはソファに放り出されていた鞄からスマホを取り出した。

「えっと、輝くんに迎えにきて、ってふみちゃんが自分で電話する?きっと大喜びで飛んでくるよー」

ふふっとからかうような笑い声で私を見る亜実さんは、手にしているスマホを振ってみせた。

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