極上の他人
「今日私がふみちゃんを連れて帰るって電話で言った時、最初はだめだって言われたのよね。
ちゃんと夕食も用意してるし、俺だって会いたいってごねられたのよ。
輝くんが学生だった頃から知ってるけど、あんなに子供っぽい輝くん初めてだったなあ。
ふみちゃんのこと、よっぽど気に入ってるのね」
語尾を伸ばす口調はあからさまに面白がっているようで、何だか恥ずかしくなる。
いつも大人で何事にも動じない輝さんが子供っぽいところなんて想像もできないけれど、見てみたいなあとも思う。
それに、学生の頃の輝さんがどんな感じだったのか、それも気になる。
「で?ふみちゃん、電話する?私がしてもいいならするけど?」
ほらほら、と私の目の前でスマホを揺らす亜実さんにつられて、私も小さく笑った。
亜実さん自身の苦しみを話してくれたばかりだというのに、そんな話なんてなかったかのように明るく笑ってくれる。
本当に、強い人だな。
私も幼い頃から寂しいことが多かったけれど、亜実さんのようにあっけらかんと笑えるほど、まだ強くはない。