極上の他人


何かあるたび、自分の境遇に後ろ向きになり、落ち込んでは人を羨んだり。

まだまだ、弱すぎる。

亜実さんを見習って強くなりたい。

「ふみちゃん?」

考え込んでいる私に、亜実さんが怪訝そうな声を向けた。

「あ、えっと……亜実さんが、電話してください。それで、輝さんには、ひとりで帰るんでわざわざお迎えはいらないって言ってもらえますか?」

慌ててそれだけを言った。

今まで、輝さんに自分から電話をしたことなんてそれほどないのに、『迎えに来て』って電話をするなんてハードルが高すぎる。

それに、毎日私に時間を割いてくれているんだから、今日はお店で仕事に専念して欲しい。

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