極上の他人

亜実さんはそんな私の言葉が不満なのか、小さくため息を吐いてスマホを再び揺らした。

「ふみちゃんが迎えに来てって電話したら、輝くん喜ぶと思うんだけどな……あ、電話だ」

軽やかな着信音が部屋に響き、亜実さんは慌てて画面を見た。

すると、してやったり、というような表情を浮かべて、ちらりと視線を私に投げる。

そして、もったいぶったような声で電話に出た。

「もしもし、輝くん？……あ、ふみちゃんならちゃんとここにいるよ？そろそろ輝くんにお迎えコールをしようかと思ってたんだけど」

亜実さんの耳元のスマホからは、途切れ途切れに輝さんに違いない声が聞こえてくる。

「でもね、ふみちゃんはお迎えは遠慮するって言ってるんだけど？……え？もう近くまで来てるの？どこ？」

「あ、亜実さん……輝さんって」

亜実さんの言葉に思わず反応した。