極上の他人


私が輝さんに対して抱いている思いと同じものを、輝さんが私にも持ってくれているなら嬉しいけれど、それはないだろうと思う。

私が風邪で寝込んだ時に訪ねてきてくれたあの日以来、それまで以上に私を気にかけ、側にいてくれようとしてくれるけれど、その理由はきっと一人で暮らしている私を心配してのことだろうし。

それに、あの日輝さんが私にキスをしたことは現実だったのかも曖昧で、甘い言葉を囁いてくれたことすら私の願望による幻聴だったのかと思わずにはいられない。

輝さんがお店で一緒にいた女性、きっと彼女は輝さんにとって特別な人だろうし、それに。

「亜実さん、虹女って今言ってましたけど……。輝さんは、虹女の女の子と……」

真奈香ちゃん、という名前は言わなかったけれど、輝さんが虹女の女の子と知り合いなのかが知りたくて、そう口にした。

虹女の近くで一緒にいる輝さんと真奈香ちゃんを見かけて以来、そのことを悶々と考えている。

もしも亜実さんが知っているのなら教えて欲しい。

すると、亜実さんの表情は硬くなり、苦しげに眉を寄せた。

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