極上の他人
そんな現実を改めて実感して、予想以上に傷ついている。
今だって、目の奥が熱くなるほどだ……。
それでも、どうにか表情を保ったまま亜実さんに視線を向けた。
「輝さんは、優しいお兄さんっていうか……。お店の食事もおいしいし……」
そう。一人暮らしをしている妹を心配する優しいお兄さん、そんな感じ。
「私、料理も苦手なくせに一人暮らしだから、そんな状況を知って、色々と気にかけてくれてます」
「確かにあのお店のお料理はおいしいからね。あの料理に手なずけられちゃうのもわかるわかる。私も旦那と二人でよく行くのよ。
おまけに千早くんも格好いいから目の保養にもなるし、って。これは旦那には内緒ね」
ふふっと笑った亜実さんは、周囲を見回しながら。
「でも、旦那が一番素敵なんだけど」
小さな声で囁いた。
はあ。
そんな惚気た言葉と表情に呆れつつも、亜実さんの笑顔を見ると何も言い返せなくなる。
心底惚れている男性との結婚は、ここまで女を幸せにしてくれるんだなあ、羨ましくなる。
やっぱりいいなあ、と小さく息を吐いた。