極上の他人
「亜実さん、本当に幸せそう。……女が欲しいものを全て手に入れてますよね。格好いい旦那さんとかわいいお子様」
おまけに仕事も完璧にこなして周囲からの信頼も厚い。
社内でも、彼女を目標としている女性社員はかなり多く、私もその一人だ。
羨むように呟いた私に、亜実さんはほんの少しだけ視線を泳がせた。
何か心によぎるものがあったのか、ぐっと口を引き締めて黙り込む。
「……亜実さん?」
俯いた亜実さんに、声をかけて顔を覗きこんだ。
何か亜実さんを傷つけるようなことを言ったのかと不安になる。
これといって心当たりはないけれど、いつも明るすぎるくらいに明るい彼女とは違う様子におろおろした。
すると、
「そりゃ、私が選んだ素敵な旦那様だし、私と旦那の子供だもん、かわいい子が生まれるに決まってるでしょ?」
亜実さんはゆっくりと顔を上げた。
相変わらずにこにこ笑っていて、いつもと変わらない優しい表情をみせてくれる。
苦しげに俯いたように見えたのは気のせいだったのかな。
今でも、微かに口元が歪んで、切なさを浮かべているような気がするけれど。
見間違いなのかな。