極上の他人
何年もずっと、って一体どういう意味なんだろうか。
輝さんと出会ってからそれほど時間は経っていないし、もちろん『何年も』なんていう表現はしっくりこない。
「輝さん……?」
そう聞いた私を腕に抱いたまま、困ったように小さく笑った輝さん。
「まだ言うつもりじゃなかったんだけどな。……ま、仕方ないか」
「まだって、どういう意味ですか?私のこと……何年もって」
「まあ、そのままの意味だ。俺は、何年も史郁のことを見ていたんだ、って言うとストーカーの危ない男のようだけど」
「あ、危ない男って……でもその通りかもしれない、あ、ち、違います」
「いいよ。史郁を強引に振り回している自覚はちゃんとあるし、自分でも年下の女の子を好きな危ない男かと感じて、たまに落ち込んでもいたし」
くすり、肩をすくめて笑った輝さんは、私の顔を覗き込みながらその指先で私の頬をゆっくりと撫でる。
触れるか触れないか、優しく動く輝さんの温かさに逆らうこともなく、私は輝さんの瞳を見つめ返した。