極上の他人
輝さんの瞳が私をじっと見つめ、そして。
「史郁のことを、この目でずっと見てきたんだ。史郁が高校時代、骨折して入院した時も、そっと見舞いに行ったし、大学の合格発表は誠吾先輩から受験番号を聞いていたから自分の目で確認に行った。
そして、入社式の日の朝、緊張で貧血を起こして会社の前で倒れたことも、誠吾先輩から聞いて知ってる」
「う、うそ……」
「嘘じゃない、全て本当のことだ。俺は、誠吾先輩が大学に史郁を連れてきた時からずっと、お前のことを見てるんだ。まあ、見てるだけで、声をかけたりするつもりもなかったんだけどな」
「大学にって、え?まだ私が小学生の頃ですよね」
「ああ。誠吾先輩が史郁のことを『オレのオンナ』って自慢げに言ってたよな。あの時、誠吾先輩の近くに俺もいたんだ。誠吾先輩にしがみついて、俺らを恐々と見上げていた史郁がこんなにいい女になったんだもんな。本当、あっという間だった」
過去を思い返すようにゆっくりと呟く輝さんの腕の中、私の脳内は混乱を極め、言葉ひとつ口にできない。