極上の他人
私に優しくしてくれる理由が何であれ、輝さんが私のことを気にかけてくれるのならば、その気持ちに戸惑いながらも一緒にいたいと思っていたから。
輝さんにどんな思いがあって私を抱きしめてくれるのかもわからないけれど、私はその温かさを手放したくなくて、何も聞かずに……ううん、聞けない振りをして側にいたんだ。
輝さんに、大切な女性がいるかもしれないとわかっていても、そのことですら気づいていない振りをして、側にいた私。
自分の気持ちをコントロールするなんてできない。
優しくされる度、抱きしめられる度、おいしいご飯を作ってくれる度。
輝さんへの思いは強くなっていた。
「これ以上は、無理だよ」
戸惑い、混乱し、輝さんの思い通りに気持ちを掴まれて、ただ側にいられるだけで満足するなんて、もう無理だ。
「私、輝さんのことがわからない。どうして私の側にいてくれるのかも、どうしてずっと見ていてくれたのかもわからないけど。これ以上好きになったら、もう、無理。離れられなくなる」
輝さんの目を見る事も、俯くこともできず、目の前にある輝さんの胸元に額を押し当てながら呟いた。