極上の他人
「あ、大丈夫か?力の加減ができなかったな。好きなんて言われて年甲斐もなく……ごめん」
輝さんは焦った声をあげながら、腕の力をゆるめてくれた。
「だ、大丈夫です」
「どこか、痛くないか?」
「はい。ちょっと息苦しかっただけで、平気です」
そう言いながら、私は何度か大きく息を吸って吐いて、呼吸を整えた。
その間も、輝さんの腕が私を解放することはなく、緩められたとはいえ、その腕に包まれたままだ。
そっと視線を上げると、憂いを帯びた瞳が私を見つめていた。
そして、どこか不安げな私の姿がそこにあった。
好きな人に抱きしめられて嬉しくてどうしようもないけれど、それを信じられないような、揺れている自分の感情がそこに映っていた。