極上の他人
耳元に感じる輝さんの吐息がとどめとなって、今にも足もとから崩れそうだ。
好きな人に『好き』と告白したばかりで、そしてその相手からこうして抱きしめられて、平然としていられる方がおかしい。
足元からくずおれてしまいそうで心もとない私を見抜いているのか、輝さんは私の体をぐっと抱きしめ、小さな声で囁いた。
「何があっても、史郁には俺がいる。ちゃんと守ってやるから、大丈夫だから」
「え……?」
私の反応を探るような声に、何故か悪い事でも起こるんじゃないかと感じて振り返った。
途端、目の前にある輝さんの瞳に気付いて慌てて顔を元に戻すけれど、私の口元を追いかけるように輝さんが私に顔を寄せて、そして。
「俺も、史郁のことが、好きだよ」
かすれた声で呟くと同時に、私の反応をうかがうこともなく唇が重ねられた。
「ん……っひかる……さん」
ただ掠めるだけの、あっという間のふれあい。
夜の闇にまぎれて通り過ぎただけの甘い時間は、あっという間だ。