極上の他人
その背後から同様に近づいてくる二つの影。
目を凝らしてじっと見ると、見覚えのある女性がそこにいた。
私達に駆け寄る真奈香ちゃんを気遣うように目を細め、思わず上がった右手は真奈香ちゃんを止めようと無意識に動いたのがわかった。
私からは少し距離があるその女性の様子からは、真奈香ちゃんを心配しているのが一瞬でわかる。
……私にそんな視線を向けてくれたことなんて、なかったのに。
私と輝さんに駆け寄ってきた真奈香ちゃんの姿の向こうから、射るように向けられる強い瞳には、見覚えがある。
私が鏡を見る度に目にする瞳とよく似たその形。
けれど、その瞳が私を愛しく見つめることなんてなく、憎しみにも似た冷たい感情しか与えられたことはなかった。