極上の他人
これまで抱えてきた、そして隠してきた素直な思いを、留めておけず呟いている。
「……輝さん、ずるい。私を振りまわしてばかりで、お母さんや真奈香ちゃんのこと、黙っていたし……」
「ああ、そのことは、悪かった。それに、真奈香ちゃんのことで少しでも不安にさせて申し訳ない」
「す、少しじゃない。かなり、驚いたし……悩んだし」
「悩んだっていうのは、俺にとっては嬉しいけどな。それに、この部屋にきてからずっと、俺が調子に乗りそうなことばかり言ってるって、気付いてるか?」
目の前に立ち、私の肩に手を置いた輝さんは、これまで以上に温かい視線を私に落としている。
「史郁が、俺のことで悩めば悩むほど俺は嬉しいんだけど?」
「……やっぱり、ずるい」
「ずるくていいんだ。俺のことを考えて悩む史郁を想像するだけで気持ちはあがる。
……っていう話は後回しだ。とりあえず風呂でゆっくり気持ちを落ち着けておいで。
その間に、俺も無理矢理史郁を襲わないように、冷静になっておくから」
「ま、また、そんなことを……」
輝さんの甘い、熱い言葉に照れながら、私は焦った声をあげた。
何度も襲うなんてことを言われて、顔がどんどん熱くなる。