極上の他人
俯く私を拒むように、輝さんは私の顎に手を差し入れて視線を合わせる。
「この先、史郁を悩ませるものが俺だけだといいよな。小さな頃から背負ってきた苦労を全部おろして、新しい史郁の人生を始めるんだ。自分の境遇や過去に悩むことなく、毎日笑って過ごす。そして、俺に執着されすぎてどうしようかと、そのことだけを悩む毎日になればいいな……というより、そうなるから」
「輝さん……っん……っふ」
ぐっと腰に回された手に抱き寄せられて、私は一瞬にして輝さんに抱きしめられた。
突然重ねられた唇の動きに驚き、目を閉じることもできないままなされるがまま。
啄むような口づけに応えることもできずにいると、輝さんの舌がすっと私の口に忍び込む。
「ん……やっ……」
慌てて顔をそらそうとしても、後頭部に回された輝さんの手がそれを許さなくて、更にぐっと押し付けられて。
私の舌を絡め取る輝さんの熱に、体全体で震えてしまう。
「……史郁を悩ませるのは、俺だけでいいんだ」
「そ、そんな……」
「史郁のことを、愛するし、大切にするし、甘えさせるし……離さないし」
キスの合間に呟く輝さんの声も徐々に上ずっていき、呼吸も荒くなっていく。
私を絶対に離さないと教え込むように体を密着させ、体温を注いでくれる。