極上の他人
そんな私の慌てぶりに輝さんは目だけでくすりと笑うと、どこか私に気遣うように言葉を繋いだ。
「とにかく今は、これ以上史郁と真奈香ちゃんのお母さんを会わせるつもりはない。真奈香ちゃんにとっては優しいお母さんでも、史郁にとっては苦しみの象徴でしかない。
……いや、ずっと、ってわけじゃない。
いずれ史郁との関係が好転する時がくるかもしれないけど、それは、今じゃない」
あ……真奈香ちゃんと話してるんだ。
私の顔色が変わったんだろう、それに気付いた輝さんの表情が硬くなった。
私の頭を抱き寄せ、胸元に押し付けると、その手は私の背中を何度も上下する。
まるで私に何も心配することはないと伝えるかのような動きに、ほっとして目を閉じた。