極上の他人


ああ、そうか。

今輝さんが口にした言葉は全て、私に言い聞かせるためのものだ。

両親からの愛情に恵まれなかった私の苦しみは尋常なものではなかったけれど、だからといって今の私が不幸かといえば、決してそうではない。

私は周囲の人たちと優しい関係を築き、穏やかに毎日を過ごしている。

それに、望んでいた職に就き、やりがいある仕事をこなしている。

過去を思い出せば胸が痛み涙も浮かぶけれど、それでも今の私はちゃんと地に足をつけて地道に生きている。

それを幸せだと思わないわけがない。

じいちゃんとばあちゃん、誠吾兄ちゃんからの愛情に包まれて育った幼少期だって幸せだった。

< 349 / 460 >

この作品をシェア

pagetop