極上の他人
その幸せの連鎖が今に続き、今でも私は幸せなんだ。
たとえ両親の愛情に恵まれなくても、幸せを得ることはできるのだ。
私の表情からそう思い至ったことが伝わったのか、輝さんは安心したように頷いた。
「だから、正論を並べてこれ以上史郁を困らせないでくれ。
史郁の過去の悲しみは、真奈香ちゃんに責任があるわけでもないし、見当違いな罪悪感を解放させるために俺たちの周りに現れないで欲しい。
お母さんにも、二度と俺の店に来るなと言っておいてくれ。
厳しい言い方しかできないけど、俺は、史郁を守るためならどんなことでも言えるから」
「ひ、輝さん……」
輝さんの低い声と寄せられた眉間から感じる怒りに、私ははっとした。
スマートフォンから漏れ聞こえていた真奈香ちゃんの声も、聞こえなくなった。
きっと、輝さんの声音に気圧されて何も言えなくなったんだろう。
「輝さん、私は大丈夫だから、真奈香ちゃんを責めないで」