極上の他人
「ああ、わかってるさ。だけど、もう一言だけ」
「これ以上はもう……」
「大丈夫だ」
輝さんは、焦る私の頬をひと撫ですると、ふっと息を吐き出した。
「真奈香ちゃん?史郁は、俺が……それに、誠吾先輩も側にいて、ちゃんと幸せにするから。それも、真奈香ちゃん以上の幸せをこれでもかってほど俺が与えるから。
真奈香ちゃんは、お母さんが二度と史郁や誠吾先輩の大切なものを壊さないよう注意してくれ。これ以上史郁を苦しめるのなら、こっちも黙っちゃいないから」
「輝さーん」
最後は脅すような声で真奈香ちゃんに言い放った輝さんに、私は泣き出しそうな声をあげた。
相手は高校生の女の子なのに、厳しいことばかりを言っている。
真奈香ちゃんの心が壊れてしまうんじゃないかと不安でたまらない。
お母さんと私の関係を案じて、そして自分の立場の複雑さに心を痛めたせいで私を家まで呼び出しただけなのに。